整体から見た更年期
女性にとって更年期とは
女性にとって更年期は、一生の中でも大きな節目です。からだも大きく変動する時期ですし、同時に心も不安定になりがちな時期です。整体法では、更年期を女性の一生の中で、とても大切な時期だととらえています。
更年期をどう過ごすかという問題は、健康面、精神面でも、その後の人生のを大きく左右します。更年期を 「からだの自然」 にそって、より良く過ごすことは、その後の人生にとって大きくプラスとなります。
更年期には、「老い」 や、「女性としての終わりの時期」 といった、マイナスのイメージがつきまといがちです。そういうとらえ方で更年期を考えると、更年期は本当に嫌なだけのものということになってしまいます。そして、女性の当然の心理として、「老い」 や 「若さを失う」 ことへの不安や恐怖、そしてそれに抗いたい気持ちが心の中に起こってきます。
そういう心のゆらぎの自覚がある人はまだよいのですが、自覚しない心の深いところ、つまり深層意識や潜在意識と呼ばれる心の領域において不安や若さへの執着のようなものがあると、それが更年期におけるからだの自然な変化を阻害します。
理屈で考えたこと、顕在意識的な思考は、それほど体に影響をあたえることはありません。しかし、無意識に心の深いところに芽生えた 「不安」 や 「恐れ」 などは、体に大きく影響を及ぼします。
人前に出て緊張したり上がったりして赤面するのも、潜在意識、無意識的な心の中に「恥ずかしい」 という気持ちが働くからです。頭では、上がっちゃいけない、顔を赤くしちゃいけない、と思ってみても、ますます顔が赤くなるばかりです。意識的な心と、無意識的な心では、無意識的な心の方がずっとからだに直結しているのです。
更年期に対する 「不安 」 や「焦燥」 が、更年期のからだの自然な変化を妨げ、いろいろな更年期障害といわれる症状を作り出している原因の一つになっているのです。
しかし、本当は更年期は、「からだの自然の営み」 であって、決して毛嫌いするようなものではありません。今までと違う、新しい生活に入るための、からだの変化の時です。
更年期は、これまでの古いからだを脱ぎ捨てて、新しい健康で爽快な体に生まれ変わるための、積極的な変化の時期なのです。
老いるのではなく変身する
医学的に更年期を定義すると、必ず 「卵巣の機能が衰えはじめ ・・・」 とか 「卵巣が老化して ・・・」などという言葉がでてきます。しかし、私は、更年期になって、卵巣が閉経に向かってその機能を低下させていくことを、単純な老化ととらえるのは間違いだと思います。
人間の体は、いつでもどこかが壊れ、どこかが新しく創りなおされています。新陳代謝といいますが、新しくなるためには、一度破壊することが必要です。つまり体は、壊しては創り、壊しては創り、をくり返しているのです。
この場合壊すというのは、細胞が壊れていくことです。体を新しく更新していくためには、まず古い細胞が壊れて、新しい細胞にその席をゆずらなくてはなりません。
ここで大切なことは、古くなった細胞はただ古くなって壊れるのではなく、自ら次の新しい細胞のために意志を持って壊れていくのです。意志を持ってというのは、もちろん比喩ではありますが、実際に細胞は自ら壊れていくようにプログラムされているのです。この細胞の自死を 「アポトーシス」といいます。細胞には、ある一定の期間を過ぎて役目を果たすと、「死」 に向かうように、あらかじめ遺伝子にプログラムされています。
細胞の新陳代謝に限らず、からだの機能が部分的に停止するというのは、ごく普通の現象です。たとえば、免疫に関わる 「胸腺」 なども、20歳ぐらいをピークにその働きを低下させていきますし(その後は別系統の免疫系が仕事を引き継ぎます)、身近なところでは、月経も不要になった子宮内膜がはがれ落ちて体外に出される現象です。
子供の乳歯が、不要になって抜けていくのと同じで、閉経に向かう卵巣が機能を低下させるのも、からだが必要と判断しておこなっていることです。
更年期の卵巣は、老いて衰えていくのではなく、自ら機能を停止していくのです。それを、「老い」 や 「衰え」 と結びつけて考える必要はまったくありません。更年期は、種族保存の役割を卒業し新たな生活にはいるための、からだの自然な変化の時期なのです。
整体操法をおこない多くの人のからだの調整していると、閉経はまさに、 「からだが意志を持って変化している」 という実感があります。その変化は、ある意味では正反対の変化である妊娠・出産時のからだの変化とも似通ったところがあるように思えます。つまり、からだが自ら変化しているという「感じ」が、妊娠・出産と同じように更年期のからだの変化にもあるのです。その変化が、大きな 「自然のリズム」 によって、動いていることもまた共通しています。
種族保存のための機能から解放される
閉経以前の女性のからだというのは、子供を産み育てるという 「種族保存」のための機能を最優先に働いています。からだの生命リズム自体が、排卵 ・月経という、生殖のためのリズムに支配されているといえます。そして、その状態は、思春期に初潮を迎えてから閉経するまで、30年~40数年続きます。
この期間の女性のからだというのは、逆の見方をすれば、ホルモンの変動に心もからだも大きく左右される、かなり特殊な状態であるともいえます。そして、月経前後に精神的、肉体的につらい思いをする人も結構います。
更年期は、女性がこの生殖の機能を保持することを手放していく時なのです。そして、閉経以後は、この生殖を可能にするための生理のリズムにふりまわされなくてすむようになります。肉体的にも、精神的にも安定し、人間として、そしてもちろん女性として、ますます魅力を増し、高度な精神活動が可能になっていきます。
よく、更年期を過ぎると、「女性として魅力がなくなってしまう」、というようなことをいう人がいますが、そんな心配はありません。女性の 「女性としてのエネルギー」 というのは、閉経後もかなりの年月分蓄えられているものです。閉経後に急に女性らしさがなくなるというものではありません。
体を整える好機
更年期は、からだの大きな変動期です。しかし、からだが大きく変化するということは、それだけ体を良くすることにも適した時期だといえます。しかも、更年期は、女性のからだの要であり中心である骨盤が変化するときです。この、からだの変化を体を整えるために役立てない手はありません。整体法では、妊娠 ・ 出産と同時に、更年期も女性の体を整えて健康にしていくための好機であると考えています。
骨盤を中心とする、からだの歪みや異常を抱えて生きてきてしまった人は、更年期を通して、それを改善することができます。更年期は、今までの無理なからだの使い方や不摂生によるつけを精算できる時期でもあるのです。からだの大掃除の時期と、とらえてもいいでしょう。
整体によってからだを調整する立場からいっても、更年期はからだを整えるのに良いチャンスでありますが、更年期というもの自体に自分自身でからだを調整していく自浄作用のような面があるのです。
ですから、更年期を前向きにとらえていただいて、からだを整え、より健康になるための好機として、積極的に活用していただきたいと思います。
1.現代医学から見た更年期
2.更年期の骨盤
4.閉経は早い方が良い?
5.更年期の健康生活
6.男の更年期 ~omake~