野口整体 白山治療院
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「手こひ腹あせ膝くしむ」 その2

 
体の一部に意識を置くことで、そこを起点として体を自由に伸び伸びと滑らかに使うことができる。その起点となる箇所の見つけ方が、前回の10種類の検査法である。
あとはその部位を意識して動くだけでいい。
 
体の調子を取っている特定の部位は、同一人でいつも同じというわけではなく、その焦点は移り変わる。それは、野口整体の 「体勢の移り変わり」 にも通じるところがあるかもしれない。
 
高橋氏によると、検査法をおこなうのは朝食後が最適であるという。
 

これを行う時間は、朝食後が最適である。即ちその日一日の行動に必要なからだの使い方の、意識して主眼とすべき箇所を、まず最初に見出さんがためである。
また食後は寝起き当時に比し、からだに変化が生じ、その状態が大体その日一日の基準となるからである。


 
また、
 

衝突したり、或は精神上に重大なる衝撃を受けたり、または天候や気温が急変した場合等には、しばしばからだに変動を生じ、主とすべき点もこれに従って変化する場合がある。睡眠や入浴もまた身体の使い方に変化を生ぜしめることが多い。


 
とのことである。
 
慣れてしまえば、この検査法にこだわらなくても、その日の焦点となる箇所は見つけられるようになる。
 
私は治療院までの通勤が徒歩で20分くらいなのだが、その20分の中でその日の体調を知り、また調整しながら歩いている。
この時に、ついでに 「手こひ腹あせ膝くしむ」 の順に意識を置いてみて、その日の動きの焦点を見つけている。
 
 
体のどこを中心として動くのか、もしくはどこが起点となって全体を主導するのかということは、それぞれの身体技法の中で基礎として決まっていることが多い。
楊式太極拳などでは、上級になると手が体を導くようになる。意拳では、頭が全身を率いていく、という。そして、整体操法では、丹田を中心に動いていくことが基本となっている。
 
それぞれの流儀で中心もしくは起点となる部分は決まっているのだが、生理的に体の 「調子」 がそこにないときは、なかなかうまく動けないことがある。そんなときに、この正体術を利用すると、無理なくスムーズに体を運用できることがある。
流儀の求める動きの作法はもちろん重要なものであり、それをないがしろににするわけにはいかないが、流儀の求める動きの中心は基本的に意識しつつ、正体術の教える中心を同時に用いていけばよりフレキシブルに体を運用することができる。
二つの部位を同時に意識するというのはちょっと難しいような話だが、もともと普段から意識している流儀の定める中心はすでに潜在的に意識されているので、実際はそう難しいことではない。
一見ダブルスタンダードのようではあるが、そもそも人間は矛盾を含んだ存在であるのだから、そのあたりは臨機応変でよいのだと思う。
 
 
さて、この正体術の効用は、その場で動きのパフォーマンスが向上するというだけではない。長い目で見ての効果の方に正体術としての真骨頂がある。
 
この方法によって得られた正しい体の使い方を習得することによって、当然誤った体の使い方によって体を壊すリスクは大幅に少なくなる。
同時に、体を正しく自然に使うことを通して、より健全な体の発達を促すことができる。体は正しく使い、正しく休めれば、使うほどに強くなるのだ。