秋 ~ 真冬より冷える時期
「秋の体と冷え」
秋の彼岸前後になると、体はまだ汗をかくくらいの陽気なのに、風が急に冷たくなってきます。この時期は、汗の内攻が起こりやすい時期です。汗の内攻とは、汗をかいて、その汗が急激に冷えることで、体に悪影響をあたえることです。自分でかいた汗が、自分の内を攻めるという意味です。
そして、10月にはいるとだんだん「冷え」という問題が出てきます。秋という季節は、真冬よりも「冷える」季節です。この時期、体はまだ夏の傾向が残っています。ですから、感覚の面ではあまり「冷える」という実感がありません。しかし、本格的に寒くなる真冬より、暖かいことになれていた体が急に冷たくなる時期の方が、「冷え」の影響を大きく受けます。
「寝冷え」
特に注意しなければいけないのは、「寝冷え」です。床に入るときは、まだ寒くはないのですが、明け方急に涼しくなり気温が下がります。このときに、急激に汗が内攻するのです。汗をかくほど暑くない季節でも、人間は眠るとみんな汗をかきます。体は、眠ってから汗をかくことで、疲労が抜けるようになっています。秋は、その汗が明け方急速に冷えて内攻するのです。
秋の寝冷えによる汗の内攻は、泌尿器(腎臓など)に影響が出ます。そのため、体が重くだるくなり、のどや耳が痛くなることもあります。そして、小便が近くなります。いびきをかくとか、いびきが大きくなるというのも、泌尿器の働きと関係しています。その他にも、下痢をしたり、しゃっくりが出たり、鼻血・鼻水・鼻づまりなど、冷えによる影響は、いろいろな症状として現れます。夜寝ていて足がつるのも、この時期急に多くなります。
【冷えの影響による症状】
体が重い、だるい、こわばる、関節の痛み、頭痛、一時的な視力の低下、鼻血、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、耳の痛み、下痢、小便が近くなる、しゃっくり、いびきが大きくなる、夜や明け方に足がつる(こむら返り) etc.
「妊婦と冷え」
妊婦には、生活の中で注意すべきことがいろいろとあります。その中でも、「冷える」ということに対しては十分な注意が必要です。特に足を冷やさないことが大切です。
体は、冷えると腰椎がねじれる傾向があります。 腰が捻れると、泌尿器(腎臓)が影響を受け、むくみやすくなります。妊娠中は、特にむくみやすい傾向があります。また、腰椎が捻れると、逆子になったり、お産が長くなったり重くなったりと、安産しづらくなってしまいます。体を冷やして捻れをつくらないように、用心しなければいけません。「冷えたかな」と思ったときは、熱めの朝風呂に入ることが治療になります。
「秋の体の変化」
皮膚と呼吸器(肺など)と泌尿器(腎臓など)は、呼吸・排泄という働きの上で、非常に深いつながりがあります。皮膚呼吸という言葉がありますが、皮膚はその働きからいうと呼吸器の一部ということもできます。また、発汗を通して体の中の余分な水分や塩分、そして酸などを体外に排泄する働きは、泌尿器の働きの代用です。皮膚には、呼吸器と泌尿器の両方の働きが備わっているのです。アトピーなどの皮膚に表れる異常は、必ず呼吸器か泌尿器、もしくはその両方に異常の元があります。
夏の間は、汗をたくさんかいて、皮膚から水分や塩分、酸、そしていろいろな老廃物を排泄しています。その分泌尿器にかかる負担が軽くなっています。それが秋にると、涼しくなる上に、朝晩の冷え込みによって皮膚が縮み汗が出にくくなります。そのため、水分・塩分などは尿として排泄されるようになり泌尿器が働くようになります。
夏は、腎臓の負担が減り、泌尿器が自由になる季節です。泌尿器の働きは、体の動きでは、捻る動作と関連しています。夏は、体の捻る動きが自由になり、また活発になる時期です。
秋になると、空気が乾いてきて、大きくを息を吸い込み、呼吸器が広がってきます。体の働きの焦点が胸に移り、呼吸器が活発に働く時期です。呼吸器は、体の前後運動と関係しています。秋は、体が前傾して、活動的・行動的になります。心も体も、目的に向かって前進する季節です。そして秋は、汗をかかなくなるため、泌尿器の負担が増え、また、冷えによって泌尿器が影響を受けるため、捻り動作は不自由になってきます。一方向にだけ捻れて固まり、体を捻る動きが制限されてきます。
ちなみに、冬は体の運動が少なくなり、エネルギーは頭に上昇します。体のエネルギーが、思考の働きに転換します。
春は、冬の間抑えられていた感情が動き出します。感情の動きは、消化器(胃・腸・肝臓など)の働きと関係します。消化器が、活発に働きだす季節です。このため、急に下痢をする人が増えます。感情・消化器は、体の左右運動と関係し、春は重心が左右に偏りやすくなります。
「食欲の秋」
涼しくなってくると、暑さでおちていた食欲が戻ってきます。戻ってくるのは良いのですが、戻りすぎてしまって困っている人はいないでしょうか?
実はこれも「冷え」の影響のひとつなのです。秋になって汗をかかなくなってくると、夏の間は汗から出していた体内余分な「酸」が、皮膚からは出なくなります。今度は汗にかわって尿酸として尿で排泄するようになるはずなのですが、「冷え」によって腎臓が影響を受けるので、尿からも排泄しずらいのがこの時期です。そこで、て余ってしまった体内の「酸」は、リサイクルされ胃で大量消費されます。尿酸が胃酸に化けて、胃からどんどん胃酸が出るので食欲が刺激されます。これが食欲の秋の正体です。ですからこの時期、胃が悪くなる人、胸焼けをする人が多いのです。こういう人はあとに説明する脚湯が有効です
【秋の冷え対策】
寝る間際に、お風呂に入るのはいけません。お風呂で暖まってすぐ寝ると冷えないような気がしますが、実は反対です。人間の体には、自動的に体温を一定に保つ働きが備わっています。熱くなった体は今度は冷やす方に働きます。起きていれば良いのですが、そのまま眠ってしまうと調節がきかず余分に冷えてしまうのです。
また、入浴後にすぐ寝るのは、汗をかいたまま寝ることになりますから、その汗が冷え、二重の意味で冷えてしまいます。少なくとも就寝一時間前には入浴をすませている方がよいでしょう。
そして、いよいよ涼しくなってきたら、なるべく窓際で寝ないようにします。窓際に寝て体を冷やすと、窓側を向いていた半身だけが痛くなったり、こわばったりすることもあります。
特に子供は注意が必要です。子供は、窓の側に寝て、急に冷えて寝冷えをすると、ぜん息のような発作を起こしたり、大量の鼻血を出したり、吐いたりと、激しい変動を起こすこともあります。厚手のカーテンをするなど、冷えないための工夫が必要です。
冬に向かっては、早め早めに、布団を厚く(多く)していきます。その方が、早く冬用の体に変化できるのです。春は反対に、早め早めに、布団を薄くしていきます。また、布団はこまめに干して、湿気を含まないように気をつけましょう。
【入浴による「冷え」の解消法】
秋の「冷え」で一番体に影響するのは「寝冷え」です。朝方など、急に気温が下がり、気がついたときには、もう冷えてしまっています。 明け方の「冷え」によって、皮膚が急激に縮みます。皮膚が縮むと、同時に筋肉もこわばります。また体の中では、血管も縮んでこわばってしまいます。血管がこわばることから、秋は血圧の変動が増える時期でもあります。
そして「冷え」、特に「足の冷え」は、腎臓を障害するので、体が重くだるくなり、場合によってはむくんできます。「寝冷え」によって、体が変調をきたすと、さわやかなはずの秋が、少しも快適でなくなってしまいます。
1.【朝の入浴】
「寝冷え」による症状を解消するのには、朝風呂に入ることが一番良い方法です。朝風呂は「寝冷え」に対して大変効果があります。そして、一日をスッキリと気持ちよく過ごせます。大切なのは、熱めのお湯に入ることです。ぬるいお湯では効果がありません。この場合、ちょっと熱いのを我慢するぐらいが適温です。長湯をする必要はありません。
朝風呂は、「冷え」による体の変調に対して卓効があります。一度体験していただけば、その効果にびっくりすることと思います。「冷え」が原因で起こっている、風邪のような症状、下痢、便秘、頭痛など。安易に薬にたよるよりも、まずは朝風呂を試してみることをおすすめします。
「朝風呂はちょっと・・・」という人は、朝起きてすぐに部分浴で足を温めるだけでも効果があります。秋は、起床してすぐおこない、真冬になったら、起きてしばらくして、体が少し温まってからおこないます。
2.【足湯】
足を温める部分浴です。着衣のまま、くるぶしまでかくれるようにお湯に入れます。お湯の温度は入浴温度より2度ほど高くします。出したら足が赤くなっているくらいの熱さでないと効き目がありません。冷めないように差し湯をしながら6~7分温めます。
両足が同じように赤くなっていれば、よくふき取って終わり。片方だけ赤くなっていなければ、その片方だけさらに2分温めます。 最後に少し水を飲んでおきます。
のど、鼻、耳など頚から上の症状があるときに行います。
3.【脚湯】
寝冷えの解消におすすめです。やり方は足湯と同じですが、膝くらいまで入る深さで行います。お風呂でおこなうのがやりやすいでしょう。下痢などお腹の具合の悪いときに行うと卓効があります。
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