活元運動
活元運動とは
活元運動は、野口晴哉氏によって提唱された自律調整運動法です。単なる体操、運動とは違って、体が持っている健康を保つ働きそのものを高めていくことを目的としています。
意識以前の動き
人間の体の運動系は、大きく分けて二つに分けられます。一つは、意識して体を動かす系統。意志で体をコントロールする系統の運動系です。もう一つは、意識以前に、生きていくために必要な働きを司る運動系です。まばたきや、くしゃみなどはその代表です。生理学では、前者を錐体路系運動、後者を錐体外路系運動(※)といいます。
意識以前に働いている運動系、つまり錐体外路系運動は、体の健康を保つ働きと直結しています。くしゃみ、あくび、咳、まばたきなどの体を守る反射運動も外路系の働きです。疲れてくると自然と「のび」が出たり、お腹や歯などが痛いときに無意識に手を痛みのあるあたりに持っていくのも外路系の働きです。
誰でも頚や肩がこると、自然にそのこった部分を動かしたくなります。 また、疲れがたまったり、体がこわばってくると、自然にのびをしたり、体を揺すったりするものです。
体は、どこかに違和感を感じると、それが体の表面であれ、内臓の違和であれ、無意識のうちに調整する動きをするようにできています。人間の体には、生まれつき自分で自分の体の歪みやこわばり、異常を自動的に調整する働きが備わっています。
整体法では、このような、自分の体を自動的に調整しようとする働きを 「活元運動」 と呼んでいます。そしてこの働きを積極的に活用して、体を健康に、丈夫にしていくことに役立てているのです。
(※厳密には、錐体路・錐体外路の働きは複雑に連携していて、一つの運動を単純にどちらかに分けることはできない部分もある。どちらにしても、錐体外路系運動がうまく機能するように、そして両運動系がうまく連携して働くように訓練していくのが活元運動の目的)
寝相も活元運動
誰でもおこなっている、活元運動の代表は寝相です。誰でも眠っている間にいろいろと体を動かし、姿勢を変えて疲労を解消し、体のバランスを調えています。 たとえば、手を上げて万歳をした格好で寝る人は、頭が疲れている人です。大の字になって寝る人は、食べ過ぎた人です。頭が疲れたり食べ過ぎたりすると、腰の上の方(第1・2腰椎)がこわばってきます。無意識に万歳をしたり大の字になったりして寝ることで、そのこわばりをゆるめようとしているのです。
子供の寝相は、とても自由で、のびやかです。子供は、体に備わった自然の働きがさび付いていませんから、寝相に関してもとても優秀です。 大人になるにしたがって、体の働きが鈍ってきて、おまけに行儀の良し悪しなどを考え出すので、だんだんと寝相を変えるということが、うまくいかなくなってしまうのです。 毎晩、行儀良く寝ていらっしゃる方は、ぜひ子供をお手本にしてみて下さい。
活元運動は誰にでもできる
錐体外路系運動は、体を守るためにいつでも誰の体にでも働いています。しかし、仕事や生活習慣、ストレスなどで、体がこわばり鈍ってくると、その働きもだんだんと低下してくるのです。そこで、整体法では錐体外路系を立て直し、健康な自然体を取り戻すために、活元運動を訓練していきます。
自然に体に起こる自律調整の動きを、ちょっとしたきっかけで誘導していきます。活元運動は、よほど体の鈍っている人以外は、簡単におこなえます。年齢を問わず高齢の方でも、慢性病をお持ちの方、自分で体が弱いと思っている方でもできる運動です。
運動というと決まった形の体操のようなものを連想される方が多いと思いますが、活元運動は各人の体の状態に応じてそれぞれに動いていきます。意識しての運動ではなく無意識の体の回復欲求にそった動きを誘導していきます。体にとって気持ちのいいように、快のある方向へと、体が自然に動いていくのです。
活元運動をおこなうと体の歪みやかたよりが解消され、疲労が抜けて、心身共にリフレッシュされます。自律神経の働きを調え、内臓の働きを活発にし、排泄機能をアップさせます。深く眠れるようになり、体が軽くなり、動くことが楽しくなります。 続けていくと慢性的な痛みや異常も正常になり、体は弾力を取り戻し若返っていきます。
「活元運動」 について、詳しく知りたい方には、「整体入門」 野口晴哉著 (ちくま文庫) をお薦めします。
※ 以前は定期的に活元運動を学ぶための会を開いていましたが、現在は諸事情によりお休みしております。