春の変化と花粉症 2
「去年は冷夏だったから、今年の春は花粉が少ないらしいよ」 なんていう話を聞いたことがあると思います。前の年の夏が暑くないと、次のは春には杉の花粉の量が少ないのだそうです。前年の夏の気温どうだったかということが、花粉症の人にとっては、症状の軽重を占う、一つの指標になっているようです。
整体の観点から見た場合も、「前年の夏」 の問題が、「花粉症」と名付けられた春の一連の現象と関係しているといえます。ただし、 それは花粉の量の問題ではなく、体のあり方の問題です。
「季節に合った生活を」
体が季節に対応して変化するのは、冬から春にかけてだけではありません。五季(四季+梅雨)の変化に対応して、体は変化し続けます。
冬から春に向かう変化をスムーズにするには、一年を通して季節に適応した体の使い方をしていかなければいけません。花粉症のシーズンが近くなってから、急にあわてても間に合わないのです。
夏は、ともかく汗をかく季節です。 上手に汗をかいていれば、夏はそれほど問題が起こることもありません。水分の補給に気をつけて、また、汗で出てしまう塩分を補っていれば大丈夫です。
夏に最も気をつけなくてはいけないのは、エアコンの害です。 本来夏は暑いものです。体もそれに合わせた、夏仕様に変化しています。 その状態で体を冷やしすぎるのは、体に悪影響を与えます。
特に、汗をかかなくなることは問題です。 一日中エアコンのきいた部屋で仕事をするような人は、入浴やスポーツなどを利用して、上手に汗をかく必要があります。
夏にどう過ごしたかは、翌年の春にも当然影響します。 夏の間に、夏にあった過ごし方をすることで、秋には秋の、冬には冬の体に変化できるのです。 そして、春には上手に春のからだに変わることができます。
秋に注意することは、汗の内攻と冷えの問題です。冬は当然冷えもありますが、重要なのは 「体の乾き」 の問題です。( 秋~真冬より冷える時期 ) ( 冬~若さを保つ乾燥対策→ )
その季節その季節を、上手に過ごしていくことは、健康にとって大変重要です。 季節ごとに、自然に逆らわない生活を送っていれば、次の季節への変化もうまくいきます。
そして、そういう自然にそってスムーズに適応できる体であれば、当然、春に花粉症の心配も必要なくなるわけです。
「布団は早め早めに薄くする」
花粉症と無縁になるためには、季節の変化に体がうまく適応できるようにすることが大切です。それには、季節ごとに、いくつかの生活上のコツがあります。 たとえば、夜眠るときの保温の問題です。
冬から春になるときには、暖かくなってきたら、早め早めに布団を薄くします。 その方が、うまく春の体に変化できます。 着るものなども、早め早めに薄着にしていく方がいいのです。
秋から冬に変化するときには、反対に、早め早めに布団を厚くしていきます。その方が、早く冬の体に変化できます。 がんばって、薄い布団で我慢しなくていいのです。
「肩甲骨をゆるませる」
また、肩甲骨をゆるませることは、体の春の変化がうまくいかない場合、とても有効な手段です。肩甲骨がこわばっているからといって、意識的に力を抜こうとしても、なかなか抜けるものではありません。そこで、一度逆に力を入れるのです。 いったん力を入れてからストンと脱力すると、わりと簡単に筋肉がゆるみます。
左右の肩甲骨を、背骨の方へギューッと寄せるようにして力を集めます。 そして、力が十分に集まったらストンと力を抜いて肩を落とします。次は、少し上方へ持ち上げるようにしながら背骨の方へ寄せ、同様に急に脱力します。これを何度か繰り返すだけでも、かなり肩甲骨周囲がゆるみます。
ついでに、脇の下の胸側と背中側の水かきのようになっている、筋肉をつまむようにして刺激しておくと、なお効果的です。 (前の水かきは大胸筋、後ろの水かきは僧帽筋・ 大円筋 ・ 小円筋など)
「目 ・ 鼻の蒸しタオル」
また、目や鼻がグジュグジュしてうっとうしいとき、くしゃみが続けて出るときなどは、その部分がうまくゆるまないために起こっているので、これを積極的にゆるむように応援してあげることは良いことです。具体的には、目や鼻を、蒸しタオルで温めます。
「炎症が起こっているのだから、冷やす方がよいのでは」、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、冷やして気持ちいいのは一時です。症状が起こらないように、身体の変化を助けるのなら、温める方がよいのです。
また、温めることで、血行を改善し粘膜の鬱血状態も解消できます。
蒸しタオルは、しぼったタオルをレンジで温めてもかまいません。やけどしないように注意します 目や鼻を、蒸しタオルで7、8分~10分ぐらい温めます。
欲張って、目も鼻もいっぺんに温めようとすると、効果が半減します。 目は目で温め、時間を違えて鼻は鼻で温めます。一緒にやるより効果があります。
たまに、「お風呂に浸かりながら、タオルをしぼって目に当てました」 なんていう人がいますが、それでは効果がありません。目や鼻を温めるときは、お風呂とは時間を空けておこなった方が効果があります。それに、お風呂のお湯でしぼったぐらいでは、少しタオルがぬるいでしょう。
「その場しのぎには、ひたいをたたく」
花粉症の症状の多くは、目鼻、上気道などの粘膜の過敏現象です。杉花粉などのアレルゲンに対して、免疫系が過敏に反応してしまうわけです。
しかし、体のどこかが過敏である場合は、他に鈍り(鈍麻 ・ マヒ)があることがほとんどです。花粉症も、体の働きの鈍い人が、起こします。
本来は、鈍りの代償としても過敏であり、鈍い体を何とかして正常にしたいという体の働きですから、過敏は過敏で意味があるのです。それでも、そう物分かりのいいことばかりは言っていられないときもあるでしょう。
人と会わなくてはいけないときや、学校の試験のとき、仕事の都合もあります。そんなときに、とりあえず過敏な症状を止めてしまう急所があります。
目鼻の過敏な症状を、一時的に抑えるには、額の髪の生え際をたたきます。手のひらの手首に近い方、手根といわれるあたりで、額の生え際をどんどんとたたきます。回数は20回~30回。生え際が後退している方は、今の生え際ではなく、かつての生え際です。
ここをたたくと、体の過敏現象を押さえることができます。 花粉症に限らず、腸の過敏で下痢が続いているときなど、過敏全般に使う急所です。
ただし、体の働きを鈍くするところでもありますから、乱用はいけません。ここ一番というときに試してみて下さい。
「活元運動」
体を整えて、季節の変化に適応できるようにするには、活元運動が一番です。もちろん、整体操法で調整してもいいのですが、その場合でも、活元運動も同時におこなうことが、相乗効果を発揮します。
活元運動は、人間の意識しない部分の働きを育てていきます。 季節に対応した体の変化なども、無意識に体がおこなっている働きです。
活元運動は、お年寄りでも、体の弱い人でもおこなえる、自律運動法です。決まった動きのパターンがあるわけではなく、その人その人の、体の必要に応じてそれぞれに運動が出るように誘導します。
(※ 以前は定期的に活元運動を学ぶための会を開いていましたが、現在は諸事情によりお休みしております。活元運動について、詳しく知りたい方には、ちくま文庫の野口晴哉著「整体入門」をお薦めします)
「花粉症なんて、やらなくていい」
「花粉症」 のレッテルを貼られたからといって、いつまでもそれに義理立てすることはありません。花粉症なんて、いつやめたってかまわないのです。抗原抗体反応の検査で、「杉花粉のアレルギーがある」 といわれても、あまり関係ありません。体が自然な状態になれば、症状は無くなってしまいます。
体が自然のリズムを取り戻せば、花粉症なんて要らなくなってしまうのです。
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